Xankが克服を目指す、ステーブルコインに固有の課題

とんどの暗号通貨が直面している価格の不安定さを緩和する方法として生まれましたのが、ステーブルコインの概念です。しかし、残念ながら、そこまで広く普及していません。

小売人が注目すべきは価格の変動ではなく、自身の事業です。事業主や請負業者は、見積もり、取引、またはトランザクションという一連の流れの間で、自分たちの提供する商品・サービスの価値が確実に保たれることを求めています。富の備蓄手段として暗号通貨を利用している人は、高リスクをはらむ資産の性質に単純に甘んじるしかないのでしょうか。

価格の安定性を確保する方法のひとつに、特定の法定通貨に対してコインの価値を「ペグ」する方法があります。ただし、価格が需要と供給によって決まるオープンマーケットでは、この概念は経済的に逆説的です。法定通貨の世界では、特定の通貨にペグする仕組みは、これまでにしばしば悲惨な結果をもたらしました。最近では、世界市場で作られたmeyhemが2015年1月15日にスイスフランがそのユーロペグを切り離したとき、惨劇をもたらしたことを、誰もが目にしました。特定の原資産に対して価格を固定することはそうシンプルな作業ではなく、その方法論で確実なものは、今のところはまだ登場していません。

今回の記事では、担保付きまたはシニョリッジシェアベースなど、さまざまな安定コインプロジェクトで使用されてきた基本的な方法を見ていきます。その上で、Xankが採用している、トランザクションごとにコインの価値を一定にするメカニズムの長所について触れます。

 

担保付きステーブルコイン

ステーブルコインに関する初期の試みは、特定の法定通貨にペグするために担保を必要としました。たとえば、発行されたテザーごとに、米ドル換算で同額の法定通貨が準備金として用意されます。ユーザーがテザーから現金を引き出すと、準備金は同じ額だけ減額され、Tetherコインもバーンされます。これにより、市場に流通しているテザー量と準備金として保持されている米ドル総額とが、常に等しくなる仕組みになっています。テザーは、法定通貨担保型ステーブルコインの一例です。法定通貨担保型ステーブルコインが直面する主な問題は、そのコインをベースにしたエコシステムを維持するために、非常に莫大な額の準備金が必要になるということです。これに加え、誰が誰に担保をしているのか、準備金をこれからも永続的に確保できるのか、もしプロジェクトが立ちゆかなくなった場合の保障はどうなるのか、といった疑問も生じ、そのコインが失敗に終わる急所となっています。他によくある疑問として、もし短期間に多くの人が暗号通貨を現金に換金したときに生じる市場の変化に法定通貨担保型ステーブルコインが耐えられるのか、というものもあります。これらのシナリオの多くはまだストレステストを受けていないため、答えはまだありません。

別のアイデアとして、ステーブルコインの担保として、別の暗号通貨を使用する方法があります。この方法を選択した場合、担保の対象として選択した暗号通貨価格が、どれほど変動しやすいのかを考慮する必要があります。ペグを維持するために準備金として保有する必要がある暗号通貨の量は、担保となる暗号通貨の価格変動性によります。これを言い換えると、価格の変動をすべて吸収できる量の暗号通貨をあらかじめ「過剰に担保にする」ことが必要になります。*大幅かつ持続的な価格下落に価格の根拠となる暗号通貨が直面している場合、ステーブルコインはペグを維持するために、担保となっている暗号通貨を清算する必要にさらされるかもしれません。*担保がすべて清算されると、ステーブルコインの価格は原資産に組み入れられます。このシナリオを回避するには、担保として保有する暗号通貨の量をかなり多くする必要があります。多くの場合、必要となる担保の額は、ペグを維持するために必要な金額の数倍にもなります。潜在的なリスクを反映するために利子の支払いが提供されたとしても、必要な担保を維持するために彼らの暗号保有に貢献するように締約国を引き付けることはますます困難になるでしょう。先ほど、法定通貨担保型ステーブルコインは市場のストレステストを十分に受けていない、と述べました。暗号通貨担保型ステーブルコインも同様で、市場のボラティリティが高い時期にその実用性をテストされていません。そのため、暗号通貨の市況が非常に悪くなってしまった時に、それらのコインは破滅的な状態になってしまう可能性もあります。

 

無担保型シニョリッジ・シェア

シニョリッジ・シェア(訳注:シニョリッジ・シェアとは、通貨発行益を株式のような権利にし、権利の保持者に利益を分配すること)の概念は、Robert Samsが発表した論文「暗号通貨の安定化に関するメモ:シニョリッジ・シェア(A Note on Cryptocurrency Stabilisation: Seigniorage Shares)」で紹介されました。初版が2014年に発行され、2015年に更新されました。この論文では、スマートコントラクトであれば、ペグしている資産を買い戻すなどの手間を掛けずに価格安定性を実現できる、と述べています。なぜなら、価格の変動がスマートコントラクトによって自動調整されるからです。ステーブルコインの価格が下がり、シニョリッジ準備金を侵食するような場合には、新しいシニョリッジ・シェアが発行される可能性があります。これにより、対象となるステーブルコインの価格が安定した時点を満期と仮定しているため、その時点で発行済み株式を所有している人々は、利益を得ることができます。

このスキームにはいくつかのバリエーションがありますが、それらすべての前提は、暗号通貨が今後も成長し続けるということです。これは決して非現実的なシナリオではありません。経済が右肩上がりで成長するという仮定にもとづき、マネーサプライを充実させ続ける中央銀行のあり方を、暗号通貨業界もある程度はなぞる必要があるでしょう。しかし、市場の低迷が持続した場合、投資家は自らのシェアを我先にと手放すため、そのコイン価格は下落のスパイラルに陥るでしょう。

技術的な課題もあります。ブロックチェーンは価格データと連動しないのです。スマートコントラクトをリアルタイムで更新するために、信頼できる価格データフィードが必要です。このような役割を担うフィードは設置可能ですが、操作されたり、休止したりすることなく稼働し続ける必要があります。今のところ、十分なストレステストを通過したオラクルフィードは存在しません。

 

ステーブルペイと自律資金調達をするXankリザーブ

既存のステーブルコインの試みが解決できていない問題のいくつかを克服するという点で、Xankは第3世代のステーブルコインである、ともいえます。Xankは、価格が自由に変動する暗号通貨として機能します。つまり、Xankの価格は、ステーブルコインではない暗号通貨と同様に、市場における需要と供給のバランスによって決定されます。これにより、Xankが必ずしも常に価格が安定しているコインとして機能する必要性を軽減します。その代わりに、Xankはステーブルペイという価格安定メカニズムを導入しています。ステーブルペイはオプションであり、特定の取引期間中のみ、ステーブルコイン機能の利益を受けることができます。このオプションは、取引ごとに使用可能です。つまり、ユーザー、事業者、小売人、または取引所が何かしらの取引実施時に、そのコイン価格を安定させる必要がある場合、オプションなしの典型的な方法でXankを利用する代わりに、ステーブルペイ機能を活用した取引が可能です。

ステーブルペイ機能は、Xankリザーブと連携して稼働します。Xankリザーブは、ブロック報酬から一定率を自律的に受け取る仕組みになっています。Xankの取引注に価格が一定に保たれるよう、ステーブルペイ機能が取引中のXankコインの金額を調整します。ステーブルコイン機能が常にネットワーク全体で機能するのではなく、「必要に応じて」機能することを意味しています。

自律資金調達をするリザーブは、献身的な投資家や株主に準備金を頼っている既存の担保型暗号通貨とは異なり、担保要件がプロトコルレベルで自律的に確立されることを意味します。これにより、他のステーブルコインに見られるような中央集権的な担保要件が必要なくなります。つまり、担保要件が分散化されるのです。

不正操作や機能停止に陥りにくい信頼性の高いデータフィードを確立するため、XankはIMFの特別引出権(SDR)にペグする方式を選択しました。SDR価格は、世界の主要通貨、すなわち、米ドル、ユーロ、中国人民元、日本円、および英ポンドをまとめたものです。この価格指標を採用することで、バスケット内にある通貨のいずれかにペグするよりも、SDR価格にペグした方がXankの価値は安定します。価格は米ドル建てで、1981年以来IMFによって毎日公表されています。フィードは<br>IMFのウェブサイト<br>にて誰でも確認ができるため、オラクルに組み込むことは非常に簡単です。

ステーブルコイン機能に対する担保要件を分散すること、ネットワーク全体ではなく取引ごとに実行可能なステーブルコイン機能をプロトコルレベルで導入すること、リアルタイムでXankブロックチェーンへ信頼できる価格情報を渡すことのできるフィードを確立することにより、既存のステーブルコインが克服できずにいた問題のいくつかを、Xankは解決します。この記事で触れているのはソリューションのみですが、今後の記事で、ソリューションの具体的な内容と機能について解説する予定です。

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Creator & Chief Scientist @XankMoney. Founder @Hycom & @Hycare. Entrepreneur. Developer. Designer. Writer. Blockchainist. Kosdaq IPO. https://ryuhyun.kim/

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